糸車
人が生まれてから、運命の糸車は命の糸を紡いで回り始める。か細いその糸はやがて、経験という色に染められ、社会という機織りにかかって、夫々の錦に織りあがる。
その錦はどれも美しい。涙、汗、怒り、悦び、笑いに満ちた、人生の錦である。
人生を終える時、少なからずの人が各々の涙でその錦を濡らす。錦は正に気高くその涙で輝いて美しい。
万人は真に全き平等にして、美しき錦である。なん人たりとも必要のない命はない。
寝たきりなりとも、その意識のなくとも決して、必要のない命はない。
皆、共に自信を持って生きてみようではないか。
命の生まれる処に花は咲き、命の消える処に花は手向けられる。